2021年7月31日土曜日

☆三輪龍氣生の陶 命蠢く 

 ☆菊池寛実記念 智美術館で「三輪龍氣生の陶 命蠢く」展(開催中~8月8日まで)を観た。この美術館は、現代陶芸のコレクターである菊池智氏(1923~2016)のコレクションを母体に、現代陶芸の紹介を目的に2003年に開館した美術館だ。入口を入ると、正面には1988年頃に制作された篠田桃紅の「ある女主人の肖像」と題する作品が出迎える。会場はそこから階段を降りて地下に広がる。


☆三輪龍氣生は、本名龍作、十二代休雪。三輪家という江戸時代から続く萩焼の名門陶家に生まれ育った作家だが、茶の湯の世界で親しまれる伝統から、「やきもので自己を表現するために、既存の概念のとらわれない自由な制作」を求めていく。それは、パンプレットのように、鷲であったり、頭蓋骨や乳房、苦悶の胸像など独自の世界だ。会場入口には撮影が許可の作品「人間シリーズ 祈りⅠ・祈りⅡ」を展示。解説パネルには「『私には弾けるような青春時代はなかった』と語る三輪龍氣生が、若かりし日の懊悩(おうのう)を「吐き出した青春群像。」とあった。


☆図録を入手すると、そこには、井上有一や棟方志功の一連の業績をまとめあげ、国内外に評価を定着させたウナックトウキョウの海上雅臣氏(1931~2019)の名前。「月刊絵手紙」でも連載いただいたのでご記憶の方もいるだろう。三輪龍氣生も見出された一人と知る。「行け、陶への熱き思いよ~三輪龍氣生の現代性」と題した小論の最後の言葉が残る。「ーーゆめゆめ大家、巨匠を望むな、幾つになってもハラハラドキドキしているフレッシュな新人たれ」と。

 








「人間シリーズ 祈りⅠ・祈りⅡ」

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