☆サントリー美術館で、「酒呑童子 ビギンズ 展」が開催中です。酒呑童子は、日本で最も名高い鬼。平安時代、都で貴族の娘や財宝を次々に略奪していた酒呑童子が武将・源頼光とその家来によって退治される物語は、14世紀以前に成立し、やがて絵画や能などの題材になって広く普及しました。
☆なかでも、同館が所蔵する重要文化財・狩野元信筆「酒伝童子絵巻」(以下、サントリー本)は、後世に大きな影響を与えた室町時代の古例として有名です。この展示では、解体修理を終えたサントリー本を大公開するとともに、酒呑童子にまつわる二つの《はじまり》を紹介します。
☆酒呑童子の住処といえば、物語によって丹波国大江山、あるいは近江国伊吹山として描かれ、サントリー本は伊吹山系最古の絵巻として知られます。さらに近年注目されるのは、サントリー本とほぼ同じ内容を含みながらも、酒呑童子の生い立ち、すなわち《鬼のはじまり》を大胆に描き加える絵巻が相次いで発見されていることです。
☆本展では、これらの《はじまり》に焦点をあて、絵画と演劇(能)の関連にもふれながら、酒呑童子絵巻の知られざる歴史と多様な展開をたどります。現代のマンガやアニメにも息づく、日本人が古来より親しんできた鬼退治の物語です。6月15日まで。(パンフレット参照)